警備業法 主要条文解説

法令リファレンス

警備業の経営者・管理者・警備員指導教育責任者が押さえるべき主要条文を、現場での意味を添えて解説。日々の運用・行政検査・教育の場面でそのまま使えるリファレンスとしてご活用ください。

法律番号:昭和47年法律第117号 最終改正:令和5年 所管:警察庁 生活安全局

警備業法について

警備業法(昭和47年法律第117号)は、警備業を営む者とそこに従事する警備員の資質を高め、警備業務の実施を適正なものとするために定められた法律です。営業所の認定、警備員の制限、教育義務、検定、指導教育責任者など、警備業の運営に関わる主要な規律を定めています。

本ページでは、経営者・管理者・警備員指導教育責任者の方が日常的に参照する主要8条文を、現場での実務的な意味と併せて掲載しています。

第1条

目的

この法律は、警備業について必要な規制を定めることにより、警備業務の実施の適正を図ることを目的とする。

警備業法の条文解釈で迷ったとき、最終的な判断基準となるのがこの第1条です。「警備業務の実施の適正」という目的が、他の条文を読み解くうえでの原点になります。

実務では、行政指導や処分の場面で「なぜその規制があるのか」を問われたとき、この条文に立ち返ることで合理的な対応が可能になります。顧客トラブル対応や内部教育の際、単に「決まりだから」と伝えるのではなく、「警備業務の適正実施のため」という軸で社員に説明することが重要です。

第2条

定義

1この法律において「警備業務」とは、次の各号のいずれかに該当する業務であつて、他人の需要に応じて行うものをいう。

事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等(以下「警備業務対象施設」という。)における盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務

人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務

運搬中の現金、貴金属、美術品等に係る盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務

人の身体に対する危害の発生を、その身辺において警戒し、防止する業務

2この法律において「警備業」とは、警備業務を行う営業をいう。

3この法律において「警備員」とは、警備業者の使用人その他の従業者で警備業務に従事するものをいう。

4この法律において「機械警備業務」とは、警備業務用機械装置を使用して行う第一項第一号の警備業務をいう。

警備業務は業務内容によって 1号〜4号に分類され、これが実務上の警備業務区分(1号警備=施設警備、2号=交通誘導・雑踏警備、3号=貴重品運搬、4号=身辺警備)の根拠となっています。

認定を受けていない区分の業務を実施することは違法行為です。新しい種類の業務を請け負う場合は、必ず区分変更の届出・認定手続きを公安委員会に行ってください。また、「他人の需要に応じて行う」ものが対象なので、自社施設を自社社員で警戒する「自主警備」は警備業法の適用外となります。

第3条

警備業の要件

次の各号のいずれかに該当する者は、警備業を営んではならない。

破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者

禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して5年を経過しない者

最近5年間に、この法律もしくはこの法律に基づく命令の規定又は第45条の規定による公安委員会の命令に違反した者

集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で政令で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者

暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員又は暴力団員でなくなつた日から5年を経過しない者

アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者

心身の障害により警備業務を適正に行うことができない者として国家公安委員会規則で定めるもの

18歳未満の者

認定を取り消され、当該取消しの日から起算して5年を経過しない者

営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者で、その法定代理人が前各号のいずれかに該当するもの

十一法人で、その役員のうちに第1号から第9号までのいずれかに該当する者があるもの

通称 「欠格事由」と呼ばれる条文です。経営者・役員がここに該当すると会社として認定が受けられず、既存の認定も取り消されます。M&Aや役員変更の際は、新任役員の経歴を事前に確認することが必須です。

特に注意が必要なのは第11号の 「法人の役員」要件で、取締役1人でも欠格事由に該当すると会社全体が認定を失います。役員変更の登記完了後、速やかに公安委員会へ変更届を出す運用を徹底してください。また、新規役員選任の際には、本人から誓約書を取得するのが一般的な実務対応です。

第4条

認定

警備業を営もうとする者は、前条各号のいずれにも該当しないことについて、都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の認定を受けなければならない。

警備業は、自由に開業できる一般的な業種と異なり、公安委員会の事前認定を受けなければ開業できません。認定を受けずに警備業務を行った場合、100万円以下の罰金という罰則の対象となります(第57条)。

新規開業時はもちろんのこと、既に認定を受けている事業者でも、認定は5年ごとの更新制です。有効期間満了前の更新忘れは極めて多いトラブル事例で、更新漏れは即座に無認定営業状態を招きます。認定証の期限管理は経営者の最重要タスクとして、カレンダー通知や台帳化で二重管理することを推奨します。

第14条

警備員の制限

118歳未満の者又は第3条第2号から第7号までのいずれかに該当する者は、警備員となつてはならない。

2警備業者は、前項に規定する者を警備業務に従事させてはならない。

この条文は警備員個人に対する欠格事由を定めたものです。経営者(第3条)に対する要件と重なる部分が多いですが、第1号(破産)・第8号(18歳未満・重複)・第9条以下は対象外で、より限定的な欠格要件となっています。

採用時のポイントは 身元確認書類の徴収と本人誓約書の取得です。具体的には、住民票・身分証明書(本籍地の市区町村が発行する破産や成年後見に関する証明書)・医師の診断書(心身の状況)・本人誓約書の4点セットが一般的な実務対応です。これらは警備員名簿と共に営業所に備え付けておき、行政検査で即座に提示できるよう整備してください。

第15条

警備業務実施の基本原則

警備業者及び警備員は、警備業務を行うに当たつては、この法律により特別に権限を与えられているものでないことに留意するとともに、他人の権利及び自由を侵害し、又は個人若しくは団体の正当な活動に干渉してはならない。

警備員は警察官ではなく、警備業法によって特別な権限を与えられているわけではないという基本原則を明文化した条文です。警備員の法的地位は、あくまで「一般私人」と同等であることを示しています。

現場で問題になりやすいのは、不審者対応や万引き対応の場面です。所持品検査、身柄の拘束、強制的な退去命令などは、いずれも私人としての限界を超えると違法行為(強要罪・監禁罪・暴行罪など)になり得ます。新任教育・現任教育では、「できること」と「できないこと」の線引きを具体的な事例で繰り返し教育する必要があります。この原則の周知徹底が、結果的に会社と警備員自身を守ることになります。

第21条

教育

1警備業者は、警備業務を適正に実施するため、国家公安委員会規則で定めるところにより、警備員の指導及び教育に関する計画を作成し、これに基づき、警備員に対し、警備業務を行うにつき必要な知識及び能力に関する教育を行わなければならない。

2警備業者は、その選任した警備員指導教育責任者に、警備員の指導及び教育に関することで国家公安委員会規則で定めるものを行わせなければならない。

警備業者に対する 教育義務を定めた、実務上もっとも重要な条文のひとつです。具体的な教育時間・内容は施行規則第38条で定められており、新任教育20時間以上・現任教育10時間以上(年度ごと)が標準的な基準となります。

行政検査でもっとも厳しくチェックされるのが、この教育実施記録です。実施日・受講者・講師・時間数・教育内容・使用した教材まで、すべてを記録し、警備員名簿の備付書類として3年間保管することが求められます。記録が不十分だと「教育を実施していない」と判断され、指示処分・営業停止処分の対象となります。記録は形式的なものではなく、実際の教育内容が記述できるレベルで残しましょう。

第45条

指示

公安委員会は、警備業者又は警備員が警備業務に関し、この法律若しくはこの法律に基づく命令の規定又はこれらの規定に基づく処分に違反した場合において、警備業務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、当該警備業者に対し、必要な指示をすることができる。

公安委員会が警備業者に対して行う 行政指導の根拠条文です。実務上は「指示書」や「指示処分」と呼ばれ、違反事項の是正を命じる行政処分として下されます。

指示処分を受けた場合、対応の可否がその後の営業継続を左右します。指示内容に従わなかった場合は 営業停止命令(第48条)や認定取消し(第8条)という重い処分に発展するため、速やかに是正計画を作成し、期限内に完了させることが不可欠です。また、指示処分の事実は5年間記録として残り、第3条第3号の欠格事由に該当する可能性があるため、再犯リスクを徹底的に管理する必要があります。

出典・参考資料

本ページに掲載している警備業法の条文は、デジタル庁が提供する公的な法令検索システム「e-Gov法令検索」のデータを基にしています。条文の正確な文言および最新の改正情報については、必ず下記の一次情報をご確認ください。

出典: e-Gov法令検索「警備業法(昭和47年法律第117号)」

本ページの「現場での意味」は、警備総合ナビ編集部による実務上の解釈・解説であり、法的な拘束力を有するものではありません。個別の事案については、所轄の都道府県公安委員会、または顧問弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。また、条文は記事公開時点のものであり、最新の改正状況はe-Gov法令検索で必ずご確認ください。
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